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いぬさんの病気について KNOWLEDGE

免疫介在性血小板減少症(IMT)

飼い主さんの声

飼い主さんの声 飼い主さんの声

2、3日前から便に少し血がついていたが、下痢ではなかった。今日の便にも血が混ざっており、いよいよ下痢になってしまった。元気食欲はあり、嘔吐はない。

免疫介在性血小板減少症(IMT)

当院の獣医師より

便に少し血がついたり、下痢に血が混ざることは日頃よく遭遇することです。しかし、下血の鑑別疾患を見てみると、出血性胃腸炎、寄生虫感染、炎症性腸疾患、膵炎、通過障害(異物、腸重積など)、腫瘍、止血異常など怖い病気もあります。そのため、よくみる症状だからといって様子をみると、大変なことになることがあります。
今回は検査により、免疫介在性血小板減少症(IMT)による下血であることが判りました。血小板は出血があった時に、最初に血を止める役割をしてくれているので、これがなくなると血が止まりにくくなります。血が止まらなければ貧血となり亡くなってしまうことも少なくありません。下血の他に皮下や粘膜の点状出血、紫斑が認められ、貧血も伴っていましたが、免疫抑制剤などによりコントロールできるようになりました。

病態

本来は外部の病原体などに対して攻撃し、体を守る役割をしている免疫が、自己の体内成分である血小板に対して攻撃し、血小板を壊してしまう状態です。特発性IMTと続発性IMTがあり、続発性IMTの原因として、感染性疾患、腫瘍性疾患、薬剤性、輸血などが考えられています。

症状

  • 皮膚・粘膜の点状出血、紫斑、鼻出血、吐血、下血、血尿、前眼房出血など
  • 稀に頭蓋内出血による発作、脊髄内出血による麻痺も認められる。

血小板減少症の鑑別疾患

  • 破壊・消費亢進:IMT、血液喪失、播種性血管内凝固(DIC)、脈管炎、腫瘍
  • 産生低下:骨髄疾患、感染症、薬剤性、腫瘍
  • 分布異常:脾腫
  • その他:巨大血小板、アーティファクト

検査

IMTの診断をするためには、まず出血傾向の原因を探し、その上で血小板減少症の鑑別診断を行う必要があります。基本的には除外診断となりますので、全身スクリーニング検査が必要になります。

おこなった検査

  • 身体検査
  • 血液検査(CBC、血液化学検査、凝固系検査、感染症検査、免疫学的検査)
  • 画像検査
  • 尿検査
  • 糞便検査
  • 骨髄検査

治療

基本的な治療方針は、暴走している免疫を抑えなければならないため、免疫抑制療法を行います。IMTの約60%でステロイドが有効ですが、それが効き始めるまでに3〜7日程度時間がかかります。免疫抑制剤の効果が出始めるまでの時間はもっとかかります。貧血が重度の場合など輸血が必要になることもありますが、輸血はあくまでも治療薬に反応するまでの時間稼ぎです。

おこなった治療

  • ステロイド剤
  • 免疫抑制剤
  • ヒト免疫グロブリン製剤
  • 脾臓摘出
  • その他

予後

致命率は6〜30%と言われています。寛解しても31%の症例で再発が認められるとの報告があります(中央値79日)。また、IMTの30%でIMHA(免疫介在性溶血性貧血)を伴うエヴァンス症候群であったとの報告もあります。