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いぬさんの病気について KNOWLEDGE
炎症性腸疾患(IBD)
飼い主さんの声
3日前から下痢をしている。食欲はあるが昨日は嘔吐した。
炎症性腸疾患(IBD)
当院の獣医師より
下痢とは様々な原因で便の水分量が増加することで起こります。下痢は小腸性と大腸性、急性と慢性に分けられ、これらを判断することが下痢を診断する上で重要になってきます。小腸性の下痢は便の量が増加し、排便回数は増加するものの通常しぶりは見られません。関連する症状として、嘔吐や急激な体重減少、脱水が見られることがあります。一方大腸性の下痢では便の量は減少するかいつも通りで、便に粘膜や鮮血が付着していたりしぶりがあったりします。脱水や急激な体重減少は通常見られません。このように症状からも下痢の原因を探りつつ、検査で原因を特定し治療していきます。
今回の症例は血液検査でアルブミンの数値が低く、腹水と胸水が溜まっていました。画像診断や糞便検査、血液検査などで下痢の原因となる他の疾患を除外し、内視鏡検査で消化管粘膜の病理検査を行って炎症性腸疾患(IBD)と診断しました。当初は低アルブミン血症により腹水や胸水が溜まり、消化器症状も重度でしたが、現在は食事療法と免疫抑制薬、抗菌薬を使用して良好にコントロールできています。
病態
炎症性腸疾患とは、腸の粘膜で持続的に炎症が起きる病気です。その原因には過剰な自己免疫反応や腸内細菌叢の変化、食事による抗原反応、腸粘膜のバリアの異常など様々な要因が関わっていると言われています。小腸の病変がメインであれば嘔吐や小腸性下痢が主な症状となりますが、結腸炎が重度であれば大腸性下痢が認められ、両方の症状が見られることもあります。
下痢の鑑別疾患
- 食事性(食あたり)
- ストレス
- 寄生虫
- 出血性胃腸炎
- 感染性
- 炎症性腸疾患
- リンパ管拡張症
- 腫瘍など
症状
小腸性下痢、大腸性下痢、嘔吐、食欲不振、体重減少、腹鳴、腹痛、腹水、胸水など
検査
- 身体検査
- 血液検査
- 画像検査
- 糞便検査
- 消化管内視鏡検査
治療
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免疫抑制薬
消化管粘膜の病理組織検査で炎症が認められた場合は免疫抑制薬の投与を行います。免疫抑制薬にはいくつか種類があり、どの薬をどのくらいの用量で使うか、他の免疫抑制薬との併用が必要かなどは治療しながら調整していきます。
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食事療法
投薬での治療と同時に低脂肪食による食事療法を行います。食事中の脂肪分を制限することで消化管からのタンパク質の漏出やリンパ管の拡張を軽減させることができます。
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その他の薬剤
免疫抑制薬と併用して抗菌薬を使用することもあります。低コバラミン血症が見られる場合はコバラミン製剤(ビタミンB12)を投与します。
予後
炎症性腸疾患は免疫抑制薬の投与や食事療法で良好にコントロールできることが多いです。しかし、ほとんどの症例で長期間もしくは一生にわたってなんらかの治療が必要になります。また一部の症例では治療に抵抗性を示すようになり、残念ながら亡くなってしまうこともあります。ただの下痢と様子を見ずに早めに来院していただけると、早期の発見と治療につなげることができます。