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ねこさんの病気について KNOWLEDGE
慢性腎臓病
飼い主さんの声
最近食欲が落ちていて、時々吐く。お水を飲む量が増えた。
慢性腎臓病
当院の獣医師より
慢性腎臓病(CKD)とは長い期間にわたって腎臓に何らかの異常があり、徐々に機能が低下していく病気のことです。高齢の猫の死因第1位と言われていて、とても身近で怖い病気です。慢性腎臓病は数ヶ月から数年かけて徐々に進行し、最終的に末期の腎不全、尿毒症(尿に排出されるべき有毒物質が体の中に溜まってしまう病気)となり死に至ります。
この病気の怖いところは、飼い主さんが気づいた時にはかなり進行していることが多いという点と、障害を受けた腎臓の組織は元に戻らないという点です。血液検査で異常が出たり、多飲多尿や食欲不振などの症状に気づいた時には、すでに腎臓の機能は半分以上失われていると言われています。壊れてしまった組織を回復することは出来ないため、慢性腎臓病の治療は残った腎機能を保護しつつ病気の進行を遅らせることが目的になります。
今回の症例は以前から血液検査で腎数値(BUN、クレアチニン、SDMA)の軽度な上昇が見られていました。タンパク質・リン・ナトリウムを制限した療法食などで治療していましたが、徐々に病態は進行し、食欲不振や嘔吐、多飲多尿といった症状が出てきたため、投薬や点滴による治療を追加しました。現在は点滴の回数を増やしながら元気な状態を維持できています。
以下、慢性腎臓病について説明します。
原因
- 先天性・遺伝性
- 腎アミロイド症
- 腎盂腎炎
- 尿路感染症
- 腎結石
- 尿路閉塞
- 感染症(FIP)
- 腎毒性物質
- 腫瘍など
症状
- 初期:症状なし
- 中〜後期:多飲多尿、体重減少、口内炎、食欲不振、嘔吐
検査
- 尿検査
- 血液検査
- 画像検査(レントゲン、エコー)
- 血圧測定
治療
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食事療法
腎臓の負担を軽減するため、低タンパク質・低リン・低ナトリウムに調整されている腎臓病用の療法食を使います。また、腸内の窒素物やリンを減らして体内への吸収を抑えるサプリメントなどもあります。
また、慢性腎臓病の猫は多尿により脱水していることが多いので、水分をたくさん摂ることも重要です。飲み水の量や数を増やしたり、ウェットフードを使用したりして自宅での摂水量を増やします。 -
投薬
慢性腎臓病では高血圧、高リン血症、低カリウム血症、たんぱく尿、貧血など様々な異常が見られるため、それぞれに応じた薬を使います。食欲不振や嘔吐が見られる場合は食欲増進薬や制吐薬を使うこともあります。
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点滴
摂水量の増加だけでは脱水が改善されない場合は点滴を行います。急激に腎臓病が悪化しているときは入院して静脈点滴を行いますが、安定していれば通院や自宅での皮下点滴で治療していきます。
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再生医療(幹細胞療法)
再生医療(幹細胞療法)とは、様々な組織の元となる幹細胞を人工的に培養し、体内に投与する治療法です。従来の薬による治療法とは別のメカニズムで腎臓の炎症や繊維化を抑制し、腎機能の改善や臨床症状の改善と安定化を得られると報告されています。当院では再生医療も積極的に行っておりますので、ご希望の方は獣医へご相談ください。
予後
残念ながら慢性腎臓病は治らない病気であり、どれだけ手を尽くしても徐々に悪化していきます。ただし早期に発見ししっかりと治療を続ければ、病気の進行を遅らせて寿命を全うすることができます。そのために症状が見られる前から定期的に健康診断を行い、積極的にケアを行っていくことをお勧めしています。高齢だから、治らない病気だからと諦めることなく、元気に過ごす時間を可能な限り長く保ってあげましょう。